愛の日


「ゴーン」


こたつに潜り込んでうとうとしていたゴンの背中に、がばっ、とキルアが抱きついてきた。


「なに?キルア?」
「ゴン、なぁゴンー、ゴン」

何回も名前を呼んで、ゴンの頬やら髪の毛やらにキスを降らせる。


「っ!え?え?なに?何なの!?」

驚いてあたふたするゴンに、にやり、と口元を引き上げる。

「ねぇ、ゴン」
「なっ、なに?」

キルアの怪しい笑みにぞくっ、とする。


「今日が何の日か知ってる?」
「えっ?」
「今日がさ、バレンタインデーだって、知ってる?」


ぎくっ、と、ゴンの身体が震えた。
これを見て、キルアはさらに追求の手を強めた。

「てことはさ、ゴンからオレへのチョコはないの?」



ゴンの身体が最大級に震えて、ちょっと目を逸らした。


「ないよ」
「なんで?」
「なんで、って…何でも!」
「ふぅん…隠し通すつもりなんだ?」
「…何を?」
「これ、なぁーんだ?」

ついにはそっぽを向いてしまったゴンの、わざわざその目の前にちらつかせる。


──ラッピングされたチョコレイトを。




「…あっ!そ、それどこから…っ!?」


手をいっぱいに伸ばして取り戻そうとするゴンの手は、一歩ゴンから離れたキルアのおかげで空を掴むはめになった。


「ベッドの下なんてベタなんじゃねぇの〜?」


にやにやと笑いながら、またゴンに近づいて、耳元で囁く。

「オレにチョコはないの?」

意地悪く、目の前でチョコレイトをちらつかせて。


「返してっ!」
「ゴンの手からオレに渡してくれるんだったら良いよv」
「…ーっ!!」
「いーじゃん、今日はバレンタインデーだぜ?」

おどけて言ったキルアの言葉に、ゴンは真剣な顔で言った。


「オレ、男だよっ!」


「…は?だから??」
「だっ、だからっ、おかしいでしょ!?」
「なにが?」
「…バレンタインデーって、女の子が好きな男の子にチョコを渡す日なんでしょ?
だからっ、オレ、女の子じゃないしっ、チョコ渡すのはおかしいかなって…!」


顔を真っ赤にして、作った拳が震えていた。




「ばーか」





「え?」
「馬鹿だって言ってんだよ。ゴン、お前な、考えすぎ」
「だ、だって!」
「だって、じゃないの。バレンタインデーは、好きな人に、好きだって心を伝える日なんだよ。男とか女とかは関係ねぇの」
「…そーなの?」
「そーなのvv」
「…そっか。よっし!」

何やら決意したらしいゴンは、キルアの手からチョコレイトを取り上げて、キルアに向き直った。

「はい、キルア」


満面の笑みを向ける。




「…愛の言葉は?」
「へ!?」
「愛の言葉はー?」
「……好きです」
「よくできましたv」



正面からぎゅっ、と抱き締めて、ゴンの熱い体温に酔った。




「オレも愛してる」





2月14日、バレンタインデー。
今日は、愛の日。












アトガキ☆

…何日過ぎてんじゃいぼけぇ!(自分につっこみ)
しかもホワイトデーと一緒に…ってなんじゃそりゃ。