□□□こども
今日は何の日?
訊かれる前に答えてやろうと思った。
でも、
でも俺は天の邪鬼だから
素直には言ってやらない。
「キルアー」
ねぇねぇ、なんて可愛い声を出す君に、俺は何時もと同じ顔と声で返す。
何?と、何時もと同じ言葉。
「な、何って!キルアっ、何かオレに言うことないのかなぁー…なんて」
本人は恥ずかしいらしく、はっきりは言わないけれど、すげぇバレバレ。
「んー、何だろなぁ?あ、朝飯?ご馳走さん」
なーんて。
わざと外してみせる。
何時もは朝飯に「ご馳走さま」を言わないと怒るくせに、今日はぶんぶん、と力いっぱい首を振って、そんなんじゃない、と抗議した。
「違うの?じゃぁ何だよ?」
ちろ、と目を向けてみるが、何でもない!とまた首を振った。
「あっそ。なら良いんだけど。あ、オレ買い物行ってくるわ」
「え?キ、キルア?」
少しは喰いついてくれると思っていたのか、オレが無関心を装うと、慌てて呼び止めてきた。
「なーに、ゴン?」
ちょっと意地悪して、内心の笑いを堪えながら訊く。
これで正直に言うなら、望み通り抱き締めて、君の欲しい言葉を言ってあげるのに。
ゴンは俯いて、何でもない、と首を振って、奥へ行ってしまった。
その姿に、心痛まないでもないが、呼び止める声を呑み込んで、我慢を貫いた。
ここで真実を言うより、ゴンが自分から素直にする告白を聞く、その甘い味を知ってしまっているのだ。
そうそう簡単に言ってたまるか。
「じゃ、行ってくるからなー!」
果たしてゴンがその言葉を聞いていたのか。
俺は、ドアを閉めた。
帰ってくると、ゴンが見当たらなかった。
よくよく探してみると、ゴンはソファの上で丸まっていて。
俺が出ていった後、ふて寝したのだと分かる。
「はぁーぁー」
全く、子供っぽいったらありゃしない。
手に持っていたものを机に置いて、丸くなったゴンの横に座りこんで、溜め息を尽きながら、改めてこの子供な彼に付き合う大変さを痛感した。
思わず頬に触れると、その熱さに驚く。
こども体温。
熱い熱いその体温に、頬が緩まずにはいられない。
自分はきっとにやけてるんだろうな、なんて思いつつも止められない。
ちゅ、と軽く音がする程度のキスをして、
何故だか熱を持っているらしい自分の頬に気付く。
あー、嫌だ嫌だ。
寝てるとこにキスするなんて、ちょっとエロいなぁ、とか、軽く考えてただけで赤面して。
反応が子供なのは、君と一緒にいたからだな。
なんて。
ゴンの頬を軽く引っ張ってみた。
んー、と小さく声を漏らした唇をふさいだ。
一度やったらはまってしまう。
すぐには止められない。
しばらく、起こさないように軽く、何度も口付ける。
柔らかい唇が、俺を誘う。
止められない。
深くするのもはまるけど、軽く、触れるだけのキスは、もどかしくて、逆に貪欲に求めてしまう。
だから、何度も触れる。
ずっと触れていたい。
あ。
やばい。
やばいやばい。
完璧にやばいモードだった。
ふて寝しただけあって、まだ夕方まで時間があるというのに、カーテンが閉まっていて、電気も点いていない。
薄暗い部屋。
雰囲気はばっちり過ぎて、変な気になる。
「全部お前のせいだからな!」
君が、子供なせい。
君のこども体温が心地良過ぎて。
君が子供だから。
君が、子供みたいに怒ったり、笑ったりするから。
おやすみ、とまた口付けて。
熱い体温を感じて。
丸くなってるゴンにしだれかかって、目を閉じた。
「キルアー、キルアー」
裾を引っ張られて、目が覚めた。
「キルア、キルア、これキルアでしょ?」
わくわく、目を爛々輝かせるのを見て、大体の様子を察知する。
「ちょっと、キルア見てよ!すごーい!美味しそ〜」
やっぱり子供だな。
お前が喜ぶもんを買って来たんだよ!
でも
でも、君の喜ぶ顔は、嬉しくて。
「キルア、これ…」
突然、ゴンの顔が赤く染まった。
オレからゴンへのプレゼントは、丸くて白い、バースディケーキ。
そしてその上には、メッセージを書いたチョコレイト。
「ゴン、誕生日おめでとう」
それは、君がずっと欲しかった言葉。
分かってたよ。
知ってたけど言わない。
だって俺は天の邪鬼だから。
「キルア、ありがと」
「ケーキ、美味しい?」
「うん!」
満面の笑みのゴンに、口付ける。
甘い、甘い味。
そして、気付いたのは。
メッセージを書いたチョコレイト。
結局は俺も、君と同じ。
直接伝えるのが恥ずかしかっただけ。
怒ったり、笑ったり、ころころ表情を変える君。
子供っぽいと笑ったけれど、
そんな君に心動かされてる俺も、充分子供だよなぁ。
なーんて。
子供な君が大好きだなんて、口に出して言ってあげない。
俺は天の邪鬼だから。
今日は何の日?
言われなくても答えてあげるよ。
だって俺は天の邪鬼だから。
だって今日は、愛しい君の誕生日なんだから。
アトガキ☆
ぎりぎーりセーィフ!
つうことで、5月5日はゴンち誕生日です!
おめでとう!!
改めてジャンプの傍らでキルゴン最高と叫ぶ。
(今あたしの目の前にはジャンプ17冊が積み上がっておりますよ、えぇ)
お目汚し誠に失礼致しました。