黒×橙
空に見え始めた月が、
どこか物憂げにうっすらと光を差し込ませる、ある秋の夕方
薄暗い空からオレンジ色が消え去り、その暗さに
窓際から立ち上がって、照明のスイッチを探す銀髪の少年
手には、秋の読書にぴったりな分厚い本――世界殺人鬼目録
…元殺人鬼、キルア=ゾルディック
そんなつり目には似合わぬ不安そうな顔
見つめる先にはハト時計
「はぁ…遅せぇなぁ、ゴン」
心配の原因は黒髪の健康優良児、ゴン=フリークス
夕食の買い物に出たっきり帰ってこない。
暗くなる前には帰って来い、って言ったのに…
俺も一緒に行けば良かった、などと心配を膨らませる中、
ピーンポーン
せっかちなキルアとは違う、のんびりとした呼び鈴
性格が現れた、まさしくゴンらしいもの
バタバタバタ
まるで何処かのパン工場の人みたいに急いで走るキルア
バタン!
「ゴン!」
ドアを開けると同時に呼んだ名前の人物が、
そこにはいなかった
一見、真っ白
よく見ると幾重にもぎちぎちに包帯が巻かれている
「う、うわぁ!!」
これは、俗に言うミイラ男というやつで、
可愛いゴンの姿を想像していただけに驚きとショックは大きかった。
「なっ、何なんだよこれは!?」
取り乱して尻餅をついたキルアに、
覆いかぶさるように両手を広げるミイラ男
「うーらーめーしーやーぁ」
???
うらめしや?裏飯屋?
いや、そうじゃなくて…
何故にうらめしや?
うらめしやといえば肝試しだけど、今は夏じゃないしむしろ秋…
「わかったぁーっ!!」
さすが、いつも一緒にいると口癖だっけ伝染するらしい。
まるでキュートなリアクション大王、ゴンばりの大声と
人差し指を突き出す仕草をもってして、
キルアはミイラ男…否、
よく見ると包帯からはみ出した黒髪の少年に向かって叫んだ。
「ハロウィンは肝試しとは別もんだよ、ゴン!!」
あれ、何で分かったの?と首を傾げると、
ゴンは
じゃぁハロウィンって何するの?と聞き返してきた。
「Trick or Treat?」
発音よろしく言ったキルアに、
取れかかった包帯から覗く大きな目を見張るゴン。
「何そ…んっ」
包帯で巻かれた顔から
柔らかい唇を探し出して口付ける。
「お菓子くれないとイタズラしちゃうぞ」
にやりと笑うキルアに、
ゴンは顔を赤くして、停止してしまった。
すかさずキルアは軽々とゴンを抱えて、お姫様抱っこ。
ばたばたするゴンは
ぎちぎちに巻いた包帯のおかげでいつもより抵抗が弱く、
「おっ、お菓子!お菓子あげるからぁ!!」
と叫びもむなしく、
「もらったよ、もう。ゴンの柔らかくて甘いちゅー」
やすやすと流されてしまった。
「うー、じゃ、じゃぁイタズラはなしだよね?」
「それとこれとは別問題」
「なっ、何それ!矛盾してる〜!!」
「じゃぁ、いいよ…お菓子いっぱいもらうから!」
ぎゅっと抱きしめて深く口付け
飽きるくらいにキスをして
砂糖より
チョコレイトよりずーっと甘い
何度でも
唇だけでなく
おでこもほっぺたも
「ねぇ、包帯…邪魔。取っていい?」
「やだ。頑張って巻いたんだよ!
…するとこないなら終わりにしてよ」
「うわ、つめたい!なんだよー、ゴンだって感じてるくせにぃ・・・えい」
「ひゃぁん」
「な?いいだろ?」
「…反、則っ」
「ん?端ってここ??」
「ちょっ、ひとの話聞いてな…あぁっ」
「ねぇ」
「…なにさ?」
「オレが端つかんで引っ張るから、そのままぐるぐる回って」
「え、やだよそん…あ、まさかキルア…」
「そのま・さ・か。あの時代劇オレ憧れだって言ったじゃん」
「オレは嫌だって言ったじゃん!」
「あ〜れ〜、やめてくださいまし、お殿さま〜、だからなっ!!」
「え!ちょっ、い、いや〜〜!!」
…ただの趣味爆発じゃん。
特に最後。じ、時代劇大好きっす。
大奥見てたら無性に描きたくなって…。
つか今更だけど、西洋文化と日本の裏社会がコラボレーションしてるよ…あわあわ。
と、とにかくゴンちのミイラさん見たかっただけですー。きゃー。
…タイトルはお分かりの通り、ハロウィンのイメージカラー。意味は無し。