悪魔のささやきが聞こえた…


                     「そんなにイヤなら殺してしまえよ」


悪魔のささやき 天使の微笑み




その日は良く晴れた日だった。原因は本当に単純なものだったのに…
僕らはケンカをしていた。
「はぁー…またやっちまった」
キルアが呟いた声が、1人きりの部屋にやけに響いていた。

――――1時間前
「おっ、なんだ?手紙届いてんじゃん。誰のだ?」
キルアは呟きながら手紙を拾い上げた。宛名にはゴンの名前。…まぁオレに手紙書く奴なんかいねーだろーけどさ…
そんなことを考えながら何気なく手紙の封を解き、中から紙を取り出す。
その時、部屋のドアが開きゴンが入ってきた。そして、オレを見るなり大声で叫ぶ。

「あーっ!キルアそれオレの手紙〜〜っっ!!」

とんでもなく良い目で文字を読み取ったのだろう。それにしてもかなり怒っている…。オレそんな悪いことしたか??
「キルアのバカーっ!なんでそーデリカシーが無いんだよ〜っ!!」
「は?『デリカシー』って何だよ!?」
「だからー、他人には見られたくないものがあるって分かんないのっ!?」
…他人(ヒト)って…
「分かるかよそんなもん…っ!!」
…見られたくないものって…
「そんなもん、じゃないよ大切なことだよ!」
…そりゃ、多少はあるかもしんねぇけど、けど…
「あっそ!…悪いけどオレには分かんねぇよ、そんなの!!」
「…っっ!キルアのバーカ!!」
「ったく…やんのかよ?」
「そっちこそ!」
そのまま…ゴンは部屋を出ていってしまった。今思い出してみれば、目元で何かが光っていた気がする…。
オレの頭の中では、ケンカをしたこととか、ゴンが部屋から出ていってしまったことよりも、ゴンの言葉が引っかかって離れなかった。
『他人には見られたくないものがあるって分かんないのっ!?』
そりゃぁオレだってまだゴンに話してないことはあるけどさ…でも他人って?
確かにオレたちは家族じゃない。
でも…『他人』と呼ばれるほど浅い関係じゃないんじゃないか?
それともその程度の存在だったのか?
オレは、
お前の中でそのくらいのものでしかないのか?そこまでのもんなのか?
オレは…
そんな程度のもんだったのかよ…オレって…?

『そんなにイヤなら殺してしまえよ』
どこからか、悪魔のささやきが聞こえる。心の奥に住みついた、悪魔の声…
『今までだってずっとそうだったじゃないか』
そう…確かにそうだった。侵入者とか、復讐してくる奴とか、気に入らない奴は全部殺してきた。
そうして、オレの周りからは誰もいなくなった。オレは孤独になった。
…殺すことじゃ、何も解決しない…
『殺してしまえよ』
また悪魔のささやき…うるさいっ!!
それでもささやきは続く。
殺すことが日常だった…
殺すことが当然だった…
でも、君に会ってからそれが少し変わった。
殺さなくても解決出来るんだって。
殺したくない、ってそう思うようにもなった。
『殺してしまえよ』
「嫌だっっ!!」
絶対に嫌だ。君のことを殺すなんて…君だけは…大切な…

…ゴンごめんな…

出ていってしまったゴンを追おうとドアに手をかけた。やっぱり、オレはゴンがいないとダメだから……

「あ」

どうやら同じことを考えていたらしい。ドアが開いて、そこには会いたかった君が居て…
そんな偶然に2人で笑い合った。
「さっきはごめん」
「オレの方こそ…悪かった」
キルアがそう言うと、ゴンが何かを呟いた。
「…だよ」
そう言ったゴンは優しく微笑んだ。それを聞いたキルアも、ゴンに答えるように優しく笑った。

『好きだよ』

悪魔がどんなにしつこくささやいたって
天使の微笑みにはかなわない

悪魔は静かにささやき

天使は優しく微笑んだ

… end

アトガキ☆
眠いですぅ(T△T)というわけで、今回はちょっと雰囲気違う感じで、どうだったでしょうか〜?