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オリジナル

愛してる

いつでも
どこでも
どんな君でも

………


「困ったなぁ…」

ある駅のホームに困り顔の少年。綺麗に染めた金髪に、白い肌の美少年。困った顔でもそれは様になっていて。
「さすがにこんな可愛く寝てるのを起こすのはなぁ…」
そんな顔に似合わないことを考えているとは、全く感じさせないほど。
美少年が見つめる先、彼を困り顔にさせている原因は、微かに寝息をたててベンチに座っていた。
黒髪に少し茶色が混じった頭に、軽く焼けた肌。タンクトップから伸びるその腕がやけに黒く見えるのは、隣の少年が白すぎることが原因なだけである。
「順也?起きなよ?」
耳元で囁いてみても効果なし。ふぅ、と息をついた裕平は、額まで垂下がってきた金髪をかき上げた。
「はぁ…もうすぐ電車来ちゃうよー」
もう一度口の横に手をあてて呼びかけてみる。やっぱり変化なし。また困り顔になる裕平。
それもそのはず、裕平の耳には電車の発車を知らせるベルが聞こえていた。
その割に困るだけで、焦る顔をしないのは、ポーカーフェイスの美少年。流石、といった感じ。

「起きないねー、しょうがないなぁ…」

未だ起きる気配もない順也を見やった裕平は、ポーカーフェイスを崩して、意味有り気ににやり、と笑って、耳元に顔を近づけた。



………。



「…んっ、んぁー?あれぃ?裕〜??」
「おはよう、順也」
「んー?…あ。あ、あぁぁぁぁぁ!!し、しまった!裕、オレっ…」
「寝過ごしたね、見事に」
「ぐ、ぐわぁぁ!!ご、ごめん、裕!!今何時?で、電車は!?」
「30分オーバー。電車は一本遅らせることにしたから」
「うっ…ごめん。…怒ってる…よなぁ?」
「当たり前。僕のこと待たせて、退屈にさせたんだよ?当然でしょ??」
「…このわがまま王子(ぼそっ)」
「何か言った?」
「い、いや、なんにも!!…でもさ、起こしてくれれば良かったのに」

「うん、まぁそうなんだけどね…
順也が可愛いかったからさ、起こすの勿体なくて」
「…っ、ゆ、裕!?」
「あれ、順也どーしたの?顔が真っ赤〜」
「ば、馬鹿やろっ!!知ってるくせに言うな!」
「へ?何が知ってるの??」
「…裕が可愛いとかゆう…からっ!!」
「だから赤くなってるのかぁー、可愛い順也くんvv」
「わぁぁー、言うなぁぁぁー!!」


「愛してるよ」


…?
……??
………は!?

「なっ、ゆ、裕っ!?なんでイキナリそんなっ!??」
「ねぇ順也、聞き覚え、ない?」
「え?」
「愛してる、って」
「…………………あ。」
「あった?」
「裕、何で知ってんだよっ!オレの夢っっ!!」
「さすが、秀才松本情報。やっぱ効果あるみたいだね、睡眠暗唱」
「す、睡眠暗唱?どーゆーことだ??」
「寝てる間に聞いてる外の音が、寝てる間、もしくは起きた後に影響を及ぼす…それで、順也は夢を見たんだよねぇ?」
「はぁ、まぁ…」
「どんな夢を見たか気になるなぁー?」
「え、えぇっ!?なっ、なんもねぇよっ!!」
「激しく動揺するなんて怪しいよね?」
「そ、そーんなこっとない、よー?」
「白状しなさい」
「ぜぇったい嫌だ!!」
夢の中で、祐平に言われた愛してる、の言葉に、真っ赤になって頷いたとは言えない順也だった。
「愛してるよ、順也」
「ま、また!裕、お前は…」
「だって愛してるから」
「…全く、裕、愛してる、ってどんなに重い言葉か分かってんのか?」
「分かってるよ」
「分かってない!!」
「分かってるから言ってる。ちゃんと責任とか、覚悟があるから言ってる。絶対、順也を幸せにする自信があるから…って、順也?」
「…これ以上言うな、恥ずかしい…」

そう言って両手で顔を覆った順也は、見事に耳まで赤くなっていて。

「順也?」

裕平が呼びかけた時には、鼻をすすって目にうっすら涙を浮かべて。

「ばか順也。大袈裟すぎー」

口ではそう言っても、やはり順也のそんな姿が可愛くて。その反応が嬉しすぎて。

ぎゅ、っと抱き締めた。


愛してる

いつでも
どこでも
どんな君でも




甘い雰囲気の漂う待合室に入るに入れず、まだ15分前だというのにホームに人だかりが出来ていたのは、当の2人は知らない話。




アトガキ☆

やはり、いつの時代も美少年とはクロい性格の持ち主のようです…vv